冷たいビール3分前

NO IMAGE

まもなく日付が変わる。

息子がオレゴンの大学に進む時、自分にできる親孝行は何だろうと訊ねられたのを思い出していた。

「たぶん、時々ママに元気な声を聞かせてあげることじゃないか」

そんな会話を交わして以来、週に2、3回必ず電話をしてくる。

あれからもう2年が流れた。

いつも元気なはずなどないのに、決まって明るい声で掛けてくる。

さっき電話で話した時は、起業家の講座を取ったそうで、自分でビジネスの構想(妄想?)をするのが楽しくて仕方がないと声を弾ませた。

「今年の夏休みはできるだけパパと過ごしてビジネスの話を聞かせてほしいんだ」

「おう、任せとけ。パパは何だって答えられるぞ」

そんなはずないけど、うれしくて風呂敷を広げた。

重なる時には重なるもので、どすんと歯応え満点の出来事が続くここしばらくだけど、それもこれも全部乗り越えてやる、そんな元気と勇気が満ちてきた。

冷たいビール3分前。

教科書は閉じて、明日に向けて充電だ。