少年タスク(最終回)

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ベッカムアカデミーの最終日(8月24日)、名古屋の友人から預かっている中学一年生のタスクを迎えにホームデポスタジアムに行った。

午後1時20分の日本航空の成田便に間に合わせるために、すべての行事が終わる30分前に到着したら、大勢の仲間の中ですっかり溶け込んでいるタスクがいた。

コーチが一足先にキャンプを終了するタスクのために一番に修了証を手渡してくれた。子どもたちの大きな大きな拍手の中でタスクはうれしそうにはにかんだ。

そして次々に仲間がタスクの背中を叩いたリ握手を求めた。キャンプにチェックインした時の不安げなタスクはもういない。

言葉は不自由でも、大好きなサッカーで仲間の信頼を得て、自分の居場所を作ったタスクの表情は自信と達成感が満ちている。

(空港への車中)
「どうだったキャンプは」

「楽しかった」

「友だち、いっぱいできたか」

「うん、できた」

「メール頑張って打てよ」

「うん」

「あの後、試合でシュート打てたか」

「全部で11本決めた!」

「やったやないか」

「うん!」

「自信ついたな!」

「うん!」

「コミヤマさん、日本に来る?」

「ああ。仕事でしょっちゅう行くよ」

「名古屋の方、来るん?」

「おぅ、名古屋の方も行くよ。タスク、いつかまた会おうな。おじさん、会いに行くから。しっかり頑張っとくんやぞ。それと、このキャンプに参加させてくれたお父ちゃんやお母ちゃんにありがとう言うの忘れるなよ。毎日、お父ちゃんやお母ちゃんが遅くまでお仕事してくれてるからこうしてキャンプも参加できたんぞ。親を大事にするんやぞ。いつも感謝を忘れたらいかんぞ」

「はい!」

「それとさ。おまえ、良いところたくさんあるからまっすぐに育てよ。そのままでいいから」

「はい!!」

タスクは出会ってから一番力強く返事をした。

逞しく日焼けしたタスクの横顔をチラッと見て、短い期間だけど、タスクの成長の100億分の1くらいチカラになれたと思った。

もっといろいろ伝えたかったけど、急に鼻の奥の方がつんと熱くなってしまいそれ以上しゃべれなかった。