フリーペーパー泥棒(前)

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ニジヤのサンドウィッチをつまみながらの移動式ランチが習慣化しそうなこの頃、日本語情報誌「LALALA」を発行する会社の社長、森さんから電話をもらったのは先週の月曜日のことだった。

「金曜日の夕方にガーデナのPマーケットに配布した号が翌日の朝には無くなっていた。同店は配布ポイントでは数少ない屋外の設置ポイント。1年半前から2回に渡って捕まえたフリーペーパー泥棒のGの仕業かもしれない。

最初は偶然、残業明けのメンバーが盗んでいるのを見つけてこっぴどく注意した。Gは日系に限らず、深夜にあちこちのフリーペーパーを盗んでは、古紙回収業者に納めて数十ドルのカネを手にしている。

二回目も同じガーデナの日本食レストラン前のラックにあるフリーペーパーを盗んでいるところを発見して警察をよんだ。パトカーが8台来てくれて調書も書いてくれた。二度とやらないと誓わせてそれを映像にも収めた。自宅も突き止め、免許証のコピーも取った。費用もかかることだし、反省している様子だったから訴訟は踏みとどまった。

その後は、配布後に極端な減り方をしたり、不審な様子もなかったので安心していたが、また盗難になっている可能性がある」

そういう内容の電話であった。

さっそく今後の対応について、LALALAの森さんと番頭の瀬尾さん、こちらは配布の責任者も兼務する制作マネージャーの青木と私で、二日後の水曜日にミーティングを持った。

テーブルに広げられた前回の証拠写真を手にすると怒りがこみ上げる。

われわれは1人でも多くの方に読んでいただけるよう、(一冊の本が)1人でも多くの方に回覧していただけるよう日々工夫に工夫を重ねている。それはどこの出版社もおなじであろう。この業界に携わるすべての人たちが、それこそ命がけで作っている情報誌を、「無料だから」という独りよがりな屁理屈でリサイクルにまわすとは絶対に許せない。

青木も怒りでぶるぶる震えている。

入社14年目の彼は、口下手だが、最もライトハウスを愛するひとりで、ライトハウスの誌面のことならボクより良くわかっている。

さっそく、その週の金曜日の夜に、LALALAチームはGマーケットに、われわれはSレストランの前で張り込むことにした。

(つづく)