副審デビュー

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「ゲーム、やるんだって」

家内がコーチからのメールを見ながら言った。

今日は息子の玄(はるか)のサッカーリーグが開幕して2試合目。ずっと野球と剣道ばかりやってきたのだけど、町に新しいチームができて、そのセレクションで幸いにも選んでもらえたのだ。

3つのスポーツと習い事。そして大切な日本語補習校。

毎日毎週の送り迎えで、親(とくにカミサン)の方はたまったもんじゃないけど、彼らの人生のためにしてやれることは力になりたい。

昨夜は結構な雨が降ったうえ、今も鉛色の雲が垂れ込めたままだ。

こんな日は内心、ゲームが休みだったら家で本を読んでごろごろしたいとサボリ心が顔を出してたんだけど、しばらくは出張続きで試合に顔を出してやれない。

イカンイカン、気持ち良く行かねば。

「おい、一番乗りしようぜ」

集合時間より30分早く行く。コーチは準備のためにもう来てくれている。

何かできればと、昨夜の雨で薄くなったコートの白線を引く。

昔は一輪車を引いて、(底に開いた穴から)こぼれ落ちる石灰で白いラインを引いたものだけど、今は白いスプレーを逆さに差し込み、レバーを引くと地面に噴射するようになっているのだ。これがけっこう楽しい。

慎重にまっすぐ歩くんだけど、振り返ると、人間臭い味のある極太の線がボクに向かって不器用に続いている。こういう人生を送りたい。なかなか良いではないか。昨日の酒が残っているのかしら。

実は立候補して、生まれて初めての副審にも挑戦した。
サッカーのルールはよく知らないんだけどね。

ラグビーをやっていたので同様に、ボールが外に出たところで旗を挙げるくらいに考えていたんだけど、守備陣の最後から二人目のラインに立って、相手チームのオフサイドを監視するのが大きな役目のようだ。

そんなこと知らないから、試合が始まっても神妙な顔で真ん中で立っていたら、主審が目を大きく開いて、こっちに向かって何か叫んでいる。

笑って手を振って応えたら、サッカーに詳しいダニエルの父ちゃんが飛んできて教えてくれた。すまぬすまぬ。そうであったか。

その他にも、主審補佐として、選手の入れ替りや得点者の記録をつけるんだけど、いやおかげでずいぶん勉強になった。一日でサッカー博士。

またチャレンジしていつか主審に昇格したい。もうやらせてくれないかも知れないけど。