女性経営者の会

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それにしてもこの冬のロサンゼルスは寒い。

オマケにボクの部屋がある3階はあろうことか、こんな時期に暖房が故障してしまい、部屋の中は冷凍庫のように寒かった。先週、身の危険を感じたメンバーがヒーターを買いに走ったがどこもすでに売り切れていた。いやはや、毎日マフラーを巻いて仕事をしたのはアメリカに来て初めてだ。

そう言えば、パロスバーデスではスプリンクラーから溝を流れる水が凍っていた。その一方で、ボストンでは暖冬で桜が咲いたらしいからわからない。来月のボストン、ニューヨークの出張はどんな格好でいこうか。

それはさておき。この1月17日、ロサンゼルスの女性経営者の会で講演をさせてもらった。

テレビで告知をしてくれたのと、主催者の皆さんが宣伝してくれたおかげで、会場の定員を大幅に上回る方が駆けつけてくれた。心で手を合わせて感謝。

「ずいぶんお断りしたからもっと広い会場を借りたら良かったです」という主催者のお世辞に気を良くして、副社長の片山に聞かせたら「社長はふだん表に出ないから珍しかっただけじゃないですか」とまったく価値を理解していない。助手席から路上に落とすスイッチを押しそうになった。

当日、会場には女性ばかりかと思ったら、男女半々くらいで、年齢層も20歳代から、70歳を越える方まで幅広い。どうやら一般参加の方が多いようだ。

考えた結果、講演の内容は「個人事業主や独立を目指す方に、勇気と元気、経営のヒントを持って帰ってもらう」「ライトハウスのファンになってもらう」、この2つに目的をしぼる。
まずできるだけ共感してもらえるよう自己紹介をして、その後に具体的な手法を紹介する2段階で原稿を準備した。

この日も幸い、参加者のみなさんが一言一言に頷いてくれたり、反応してくれるのに勇気づけられ、すぐに自分のペースで話すことができた。時々、自分はこんな高いところから話すなんて傲慢なんじゃないかという思いも頭をかすめたが、最後まで自信を持って話した。

実は始まってすぐにまったく緊張していない自分に驚いた。原稿を眺めながらも、半分くらいアドリブで話すことができた。なんかすごい自信がついた。

講演は大きな大きな花束と拍手をいただいて無事に終えることができた。

講演が終わってからも30人くらいの方が名刺交換をしてくれた。

「創刊から応援しているんですよ」
「息子をあなたの会社に入れてほしいわ。あなたと同い年の息子だけど(笑)」
「勇気がでました」
「明日から社員に対する態度を改めます」
「何でもチカラになれることがあったら言ってください」
「うちの会社でもインターンシップの受け入れ協力します」
「今度、私の主宰する会でもぜひ話していただけますか」
「ソフトボールやりましょう!」?
「私のこと覚えてますか」???

直接、たくさんの方と言葉を交わして本当に温かい気持ちにしてもらえた。自分はこの方たちと、このコミュニティとつながっているんだと改めて実感した。
これからももっともっと伝えていきたい。

(おまけ)長文になるけど、講演の原稿を添付しました。

以下、原稿:

みなさん、はじめまして。ライトハウスの込山です。
すみません、この中でライトハウスを読んでくださっている方、手をあげていただいてよろしいでしょうか。
(いなかったらどうしようと不安でした)

私にできるお話は、みなさまにとっては釈迦に説法のようなものですが、全力でお伝えしますので、どうか全力で聞いてやってください。

まずカンタンに自己紹介をさせてください。

私は1965年に四国の高松で生まれ、高松の漁師町で育ちました。
中学卒業後は5年半、商船高専の航海学科で外国航路の船長を目指しました。

残念ながら、学生時代はラグビーと陸上に明け暮れて、国家試験はことごとく滑り落ち、就職活動もせず落ちこぼれたままでした。

一度、親に留学をさせてほしいと相談したら、次回そういう家庭に生まれなさいとアドバイスを受けました。

幸い、卒業前の一年間の航海実習で、1986年にロングビーチ港に寄港したのがきっかけで、アメリカへの憧れの思いがいっそう強くなり、同年、卒業と同時にアメリカに渡りました。

渡米後は、ウェラコートの「串の坊」で串カツを揚げたり、当時は珍しかった帰国子女向けの学習塾を経て、88年に自分で学習塾を立ち上げました。そして、学習塾や家庭教師をやりながら、89年1月、現在のライトハウスを創刊しました。

起業の理由は、出版社を始めたら、きっと取材や営業ということで、いろいろな成功者に会えると思ったからです。

資本金は3000ドルくらいでした。ワープロとコピーマシン、備品を買って、見本誌の印刷をしたら、さっそく資本金が尽きてきました。余談ですが、創業から数年は自分の給料なんてろくにでません。それでも創業間もない大切な時期に、借金もせず、出資も受けずにやってこれたのは、学習塾や家庭教師の収入のおかげでした。

最初のオフィスはガーデナの179通りの2ベッドルームのアパートでした。
オフィスとしては、通勤時間0秒、キッチン付、洗濯機をまわしながら仕事ができる便利な環境でした。おまけにルームメイトからの家賃が入ったから、限りなくコフィスとしてのコストはゼロでした。

実は、起業と同時に結婚をしたので、新婚生活の舞台としてはいかがかさておき、お金もマンパワーもない中、コストを最小限に抑えて、家内や友人が仕事が終わったら集まって、夜中まで編集や制作作業を手伝ってくれたおかげで命をつなぐことができました。

実際、創業時の成功者に会いたいという単純な願いが実現するまでずいぶん時間を要しましたが、この1月で創業19年目を迎えることができました。

2001年にはトーランスの自社ビルに移転。業績も17期連続の増収増益で、出版事業単体で、2006年度は年商が4ミリオンを越え、利益率も、近年は30%以上を確保しています。別会社で、教育とHRの会社ライトハウスキャリアエンカレッジを合わせると10ミリオンも視野に入ってきました。

こうして成長を続けることができたのは、創業当時からの読者や広告主のみなさん、恩師、ベンダーさんやスタッフのおかげに他なりません。

その一方で、各論のところで成長することができた要因を自分なりに考えてみました。本当に釈迦に説法ですが、少しでも参考になったら幸いです。
5つの要因

(1)   &nb

sp;お客さんを知ることと、自分たちの商品に、手間とお金をかける
ライトハウスのお客さんは「読者」と「広告主」です。「広告主」は「読者」の中にいます。そういう意味で、読者を知るためのリサーチには手間とお金を徹底的にかけています。読者が、何に困って、何を求めて、何に喜んでくれるか、何に感動するか、それを記事を作るのが情報誌の仕事です。

我々の商品は「記事」であり「情報」です。ライトハウスは、日本の通信社やスポーツ新聞から、できあがった記事を買うというより、この日系社会で暮らす人が必要としている情報を、自分たちの足を使って集めることを大切にしています。自社記事は手間もお金も何倍もかかります。そのほとんどは地道な作業の積み上げです。しかし、それは結果として、マネができないものを積み上げることができると思っています。これまでも、これからも自分たちはこの日系社会に根ざした情報誌であり続けたいと思います。

(2)    年間契約をスタンダードにする
創業から4、5年の、広告の契約期間が1回とか、1ヶ月、せいぜい数ヶ月の頃、お客さんのところに更新の話にばっかり通っている自分がいました。契約のお願いは、言ってみたら「お願い」です。その関係は、どこまでいっても、頼み頼まれる関係です。入り口においてそれは必要なんだけど、そればっかりの歴史だと、自分やスタッフが歳を取った時にそれは辛すぎるし、そんな仕事には誇りが持てないと感じていました。どうしたら、営業マンが頼りにされる、お客さんと視界を共有して、いっしょに成長していくような関係になれるだろう、いつもそればかり考えていました。社員や社員の家族が、知り合いから「ライトハウスに勤めていて良いね」とどうやったら言ってもらえる会社になるだろう。
そうして行き着いたのが、年間契約をスタンダードにして、単発の広告掲載の料金設定を2倍にすることでした。長期契約を割り引くのではなく、短期を高額にするのは勇気のいることでした。導入当初は、呆れられたり、叱られてばかりでしたが、営業マンの契約更新にかけるエネルギーを、お客さんへのケアや提案にシフトすることで、少しずつですが、お客さんとの関係性が向上するとともに、売上が飛躍的に安定成長しました。現在では80%以上の広告主が年間契約なので、先の売上の見込みが立つのも強みです。近年は、それでも営業のマンパワーが追いつかない状態が続きましたが、年末から今年にかけて、ようやく戦力が整ってきたので、初心に立ち返り、ケアと提案力アップにもチカラを注ぎたいと思います。

(3)契約書はゴールではなくスタート
ライトハウスの広告のベースになる12分のサイズは一回の掲載料金が130ドルです。年間では約3000ドルになります。3000ドルの商いは、10年で3万ドル、30年では10万ドルになります。実際には、お客さんの事業が成長したらサイズもそれに伴ってアップするから、その取引は20万ドルにも30万ドルにもなります。私たちが繁盛する一番の近道はお客さんの商売繁盛です。時には、お客さんのはやる気持ちを抑えて、広告を出すタイミングを待ったり、小さいサイズを提案することもあります。お客さんとは、向き合う関係ではなく、視界を共有して、同じベクトルにチカラを重ねる関係でありたいと思います。

(4)毎週の社内勉強会の実施
ライトハウスでは社内勉強会にとてもチカラを入れています。10年以上前から週に一回、テーマを決めて、朝の8時から45分、様々なテーマについて、考えたり、話し合ったり、伝えるトレーニングの場でもあります。
ライトハウスの弱点をみんなで考えたり、伝える技術を磨いたり、自己実現について頭を整理したりします。そんな中で、おりにふれ、会社のミッションやビジョン、私の考え方を直接メンバーに伝えます。

(5)スタッフの将来をともに考える
会社の最大の「資産」であり、「宝」はスタッフです。経営者とスタッフの関係は、親分子分だし、親子のようなものだと思っています。
また、スタッフが、その会社に人生の大部分を重ねるに足る価値のある「場」でなくてはならないと思います。スタッフには人生の重心を預けて、アクセル全開で頑張ってほしいし、経営者は「物心」でそれに応える関係が理想だと思います。
ライトハウスでは、そのひとつの形として401Kにチカラを入れています。
年間に、社員が1ヶ月、会社からも1ヶ月、合計で2ヶ月ずつ積み立てられるようにしています。30年務めたとして、その間の平均月給が3500ドルとすると、一年間に7000ドルの積み立て。30年複利で積み立てると、過去の利回りでいくと50万ドル以上の備えが可能になります。60歳でいったんリタイアした時に、家のローンを払い終わって、そのうえで50万ドル、100万ドルの備えがあったら、単に気持ちを重ねて夢を追いかけたというだけでなく、物心ともに豊かな老後が現実的になっています。私も含めて、やがてスタッフは老います。その時にこそ、この会社で働いてきて良かったと思ってもらえる会社を目指したいと思います。

何とか今日までやってくることができた「理由」より、こうありたいという「理想」ばっかりになってしまいました。理想をあげて、現実が追いついていないことも多々あります。でも、根っこのところは、そんな思いで日々の経営をしています。

ライトハウスは19年目といっても、私を含めて本当に未熟者の集まりです。
ただ、この日系社会を思う気持ちと、自分たちが創る「ライトハウス」を愛する気持ちは、誰にも負けないくらい熱々です。

どうかこれからも、ライトハウスを応援していただけますようよろしくお願いします。今日はこの場をいただきありがとうございました。