鬼の家族

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大晦日の昼過ぎ。いや、実に清々しい。

昨日から鬼のように、家の中の要所要所を徹底的にキレイにした。鬼が掃除をするかどうかが問題ではない。

手始めにガレージから始まった。

工具箱は開けっ放し、使いっぱなし。サウナはいつの間にか靴箱と化し、それでもスペースが足りなくて散乱状態。相方と逸(はぐ)れたサンダルが痛々しい。中途半端にガスが残った風船のボンベ2缶。棚や道具箱には、文具やスポーツ道具、衣類や本がゴッチャになってどこから手を付けてよいかわからない。子供たちがサッカーや外で遊んで落とした芝生や泥が事態をいっそう深刻にしている。

一瞬頭がクラクラしたけど、エイヤでガレージの外にいったんすべての荷物を運び出すところから始める。

靴は、家族を集合させて、ガレージセールのようにすべて並べる。そしてその場で、これからも大事に履く靴と、もう履かない靴に分けさせる。履かない靴でも、ボロボロになった靴はご苦労さんで破棄。まだ、使えるけどサイズが小さかったり、誰かに使ってもらえそうなものは箱に入れてサルベーションアーミー用に分ける。

乗れなくなった子供の自転車や、小さくなった服、おもちゃ、お菓子、頂き物だけど自分たちが使うより喜ばれそうなものもこの機会にまとめて寄付にまわす。

娘のひかるは、寄付に出すボクの靴をピカピカに磨いてくれた。息子の玄(はるか)はボールを投げたり、自転車に乗ったりすぐに気が散る。

それでも家内がキッチンやファミリールームを片付けているうちに、ガレージは見違えるようにピカピカになった。そしてビックリするくらい広くなった。久しぶりにスイッチを入れたサウナもしっかり暑くなった。このガレージを今すぐコンテストに出したい。そんなのないけど。

そして今日。

目覚めてそのままサルベーションアーミーへ寄付を届けに行った。

運び込む荷物をボランティアのおっちゃんが手伝ってくれる。

いったんは不要になったものが、また新たな主(あるじ)のもとで第2の人生を歩む。誰かの身体を暖めたり、あるいは着飾ったり、オモチャはどこかの子供に笑顔を届けてくれるかもしれない。そんな光景を思うだけで心が満たされていく。

アメリカは消費大国の側面ばかりがクローズアップされるけど、一方で、心ある人たちの手によってリサイクルを繰り返している。サルベーションアーミの方たちに感謝。

さて。

今日のメインイベント、家中の便所掃除に取りかかる。

ボクはいっしょに担当する息子に力強く言った。

「どうせやるならパロスバーデス市で一番キレイな便所にするぞ!人が見て感動する便所にするのだ。掃除は芸術だ」

お客さんが多い我が家は便器が5つ。

まずは昨日のうちに日系のスーパーで買っておいたトイレマジックリンで、ひとつずつ便器の外側、内側、とりわけ内側については、外から見えない部分に念入りにスプレーして回る。

ちょっと時間をおいてから本番スタート。まずブラシで擦る。摩擦で発火するくらい激しく擦る。続いて手を突っ込んでスポンジ、最後はタオルで何度も磨き上げる。あんまりピカピカになるから、途中で用が足したくなったけどしばらくガマンした。もったいなくって使えない。

便所を磨いていると、床の落ちた髪の毛やホコリが気になって仕方がない。洗面台も合格点は出せない。あっ、こんなところにもホコリが。もうどうにも止まらない。気がついたら、家中のバスルームが引っ越してきて以来、一番キレイになっていた。冬なのに汗だく。もう自分にMVP。家内からは「すごい!スーパー掃除男」とおだてられ、拳を突き上げて応える。

掃除熱が飛び火した息子は、憑かれたように自分の部屋を片付け始めた。やるじゃん。家内も負けてられないと鼻の穴をふたつ大きくふくらませた。こうして我が家は鬼の家族となって、狂ったように掃除をするのだった。

ふだんからやっとけと。