ラブソング

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NYのある夜。

「もう一件、行きましょうよ」

ふだんハシゴはしないボクだけど、長年の友人のSさんに引っ張られて、43丁目だったか。「リキ」というこじんまりした酒場に行った。

カウンターのなかにピアノとギターがあり、ミュージシャンの歌を聴きながらグラスを傾ける。

「彼女はユカリさんと言って、この曲は彼女のオリジナルなんですよ」

仲良しになった隣の席のヒロシさんがうっとりした目で教えてくれた。ヒロシはユカリにお熱のようだ。

ユカリさんの透き通った声とギターの響きが胸の奥のほうに染み込んでいく。

スタッフも気分が良いヒトばかりで、「一杯だけ」のはずが、気がついたら、ボクはカウンターのなかでギターを弾いて、スタッフや他の客と熱唱していた。

学生時代はよく自分で曲を書いていた。

ラブソングを作ってみても、男子寮だったから、流しのアンちゃんのようにギターを肩からかけて、部屋を回って野郎に聴かせるしかなかった。聴く方も聴かせる方も辛い話だ。

あのちょっと気恥ずかしい楽譜はどこに行ったのだろう。