時間に対してのコスト感覚

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昔は12月前後となると毎晩のように忘年会の会食が入って、年末進行の多忙さが重なって、終いには倒れ込むようにクリスマス休暇に入ったものだった。

そう言えば20代30代は、年末に限らずとも、ボクは年中誰かと昼に夜に会食をしては、自分がまったく知らなかった業界の構造や、世の中とか社会の仕組みを学ばせてもらった。規模の大小に限らず、無数の経営者や管理職の方たちの苦労や悩みを聞くことができたのも財産だ。(そしてそのうえ広告までいただいていた)

会社勤めをしたことがないボクは、毎日マンツーマンで「世の中」学の講義を受けていたようなもんだろう。

読書で言うなら、図書館の本を片っ端から貪(むさぼ)るように読みあさる。そんな風に、自分の世界を広げて、人のつながりを築くことに重きをおいたのが20代から30代。

40になってからは、重要な仕事の話や会食は基本的に昼間に集中させるよう徐々にシフトチェンジしている。
公式の席も、副社長の片山や編集局長の西川、川嶋に任せるようになった。

夜はなるべくひとりで考えたりインプットの時間に充てて、外に出るときは、本当に会いたい人(大切な仲間、ワクワクする人)、学びたい人(教わりたい相手)、育てたい人(部下や若者)とのみ、テーブルを囲むようにしている。

結果として相手はクライアントや仕事関係であることが多いけど、そこでは人生や経営についての本質的な話をすることが多い。バカ話や色恋の話をするのも楽しいし好きだけど、それだけではつまらないし、実がない。それに、大切な人間関係の中で見栄を張ったり、変化球を投げることは人生をムダ遣いすることだ。

だから「取りあえず会う」とか「せっかくだから飲む」ことは極力避けるようにしている。

そんな気持ちで会うのは相手にも失礼だし、本当に人生の数時間を費やすに相応しいか、考えるようになった。

それは会食に限らず、会議や情報共有においても同様の考え方だ。時間に対してのコスト感覚って重要だと思う。相手(自分)の大切な時間、有限の時間を尊重したい。1分1秒だって、人が死ぬまでの時間の中の人生の大切な一部なんだ。

時間に対してのコスト感覚を意識して、クオリティの高い時間を過ごすことは人生の質を高めることにも繋がる。だからボクは(とくに社内では)せっかちにも映っているだろうし、時間に対する感覚がかなりキビシイ。

経営の進め方も、全体のコンセンサスを取って進めることも大切だけど、決断の多くのことはトップか、部署のリーダーか、任されたメンバーが決断すれば良いと思っているから、できるだけ当事者に考えさせて、判断してもらっている。ホウレンソウ(報告、相談、連絡)はしてもらうけどね。

うちは大手でもないし、仮に力量不足で移動や降格をすることはあっても、任せたからと言って本人に失敗の責任を取らせることはしない。血縁はないけど家族経営だと思っているから、失敗はみんなでカバーすれば良いし、最終責任はすべて家長のボクだ。

話が逸れていくけど、ボクは、「会議」は相談やブレストの場でなく、本来「決断」の場だと思っている。情報共有やブレストなんて必要最小限の当事者が前もってやっておくべきもので、そこでだらだら情報共有したり考え始めるなんて有り得ない。

その昔、たまに公的な集まりのメンバーとして出席することがあったけど、ボクはたいていユウタイ離脱したり、議長の精緻な似顔絵を描いてしまった。企画書を数本書き上げることもあった。議論が散漫で浅くて長いのだ。

だからボクは、経営会議とテコ入れが必要な会議以外には参加しないし幹部やメンバーに任せている。

それだけ信頼をおく幹部で固めているから、例えば、出張で何週間も空けてもボクから電話をすることはほとんどないし、ジャッジの確認はほとんどメールで事足りる。まわりの経営者から「アンタは幹部にも恵まれてる」とよく言っていただける。一番の褒め言葉ではないか。自分が褒められるよりうんとうれしい。

会社にはジャッジしなくてはならないことが無数にある。

トップがいっしょにうんうん唸って考えることがどれほどあるだろう。それよりもボクは、船が転覆しないよう、時代の変化のなかで、対応し、成長を重ねられるように準備をしておくのが一番大切な仕事であり、使命だと思っている。

もうひとつ、重きを置いているのが社員教育。教育が、経営における最大の投資だと信じている。

考え方や発想、個性は100通りあったらいいけど、本来、経営や日常の判断は、メンバーの誰がしても同じ答えが返ってくるべきだろう。

同じ価値観、哲学の共有。そのために週3回も勉強会をやっているのだ。

会社の社是と経営方針と照らし合わせたら、本来ジャッジがそうぶれるはずがない。会社のルールブック(判断基準)は、ボクのアタマの中ではなく、社是・経営方針にある。そこが徹底されるようになったら、いつかボクがバトンを渡しても経営が揺らぐことはない。

話を戻そう。

ボクの40代。

今では新しい本を片っ端からというより、昔からの特別な本と、これはと思った本だけを、何度も何度も読み返しては深く掘り下げる、そんな読書を好むようになってきた。人間関係も同様の傾向がある。大切な人たちとていねいに関係を育みたい。

はてさて。今日は生意気に時間に厳しそうなことを書いてしまったけど、ボクの人生の中で「特別枠」の時間がある。

若いヤツらの応援だ。

インターンや学生協会の支援、講演やテレビ出演がキッカケで出会ったたくさんの若者から、人生や就職に迷ったり、ピンチの時に相談がくる。会ったことない若者からもくる。

深い悩み、青臭い迷い。

聞いてほしいだけのこともある。

腹が減ってるだけのことも多い。

それもこれも含めて、彼らの人生を応援したり、背中を押してやるのが、ボクのライフワークであり人生のヨロコビだ。