移動の話

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2月16日、月曜日の夕方。

ロサンゼルスには昨日の朝帰ってきたのだけど、なんと、食事に数回這い起きる以外、30時間くらい眠り続けた。おかげで体調もずいぶん回復したようだ。

今回はシンガポールからの帰りの接続がいまひとつで、土曜日の深夜にシンガポールを発って、日曜日の早朝に成田に到着。それから10時間後に成田を出発するので、都合26時間かけて移動したことになる。

もちろん、そんなまとまった時間を有効活用しない手はないから、東京駅前の八重洲ブックストアで半日たっぷり楽しんだ。

大好きな伊集院静さんと椎名誠さんの本を入手できたし、一巻を読んだら止まらなくなったあさのあつこさんの「バッテリー」も全巻購入した。

少しスピーチと英語の勉強もせねばと、オバマ大統領の就任演説(CD付)もゲット。これでしっかり勉強して、もっと説得力のある英語をしゃべれるようにするのだ。

ボクは本が大好きで、いつもカバンや車に読みたい本をしのばせている。
そして、ひとりのランチや洗車の間、空港や待ち合わせ、眠りにつく前の数分、そんな時間の小間切れに、好きな本、尊敬する著者と向かい合う。今回は本田宗一郎さんの著書を2冊と、空港で買ったあさのあつこさんの小説を携えて旅した。

移動の話にもどそう。

それでも今日、路線や便数が飛躍的に増えたことや、エアライン間の提携のおかげで、どこに行くにも帰るにも移動が本当に便利で短時間になった。今回だって、スケジュールの調整次第ではシンガポールから直行便で帰ってくることだってできたのだ。

移動と通信手段のこの飛躍的な進化のおかげで、ボクら現代人はどれほど恩恵を受けているだろう。

長時間の移動と言えば、
今回(も)マレーシアでたいへんお世話になった住友電工の川口さん。
川口さんが30数年前に海外赴任したバグダッドへの移動を伺って仰天した。

羽田>モスクワ>コペンハーゲン>チューリッヒ>アテネ>バグダッド

要した時間は2日半だったそうだ。

「世界が狭くなった(近くなった)」というけど、こんな話を聞くとホントにそうだと思う。今は海外でもその瞬間に携帯電話がつながるし、何かあったら翌朝の飛行機に飛び乗ることだってできる。マスコミは不安を煽るけど、ボクらは本当に便利でありがたい時代に生きているのだ。

それにしても、こんな小さな島国の日本が、例えば世界GDP2位でいられるのも、そうやって長い移動をものともせず、言葉のちがう外国に乗り込んで戦ってきたジャパニーズ・ビジネスマンのおかげによるところが大きいと思う。

もうちょっと国民にも若者にも家族にも尊敬されるべきだと思う。ジャパニーズ・ビジネスマン。

再び移動に話を戻そう。

ボクはもっと長い時間をかけて移動したことがあるのを思い出した。

ひとつは、晴海からこのアメリカ本土(ロングビーチ港)に、船で2週間かけて航海したこと。

もうひとつは、同じ船でも帆船(日本丸)で90日をかけて、晴海からホノルルまで酷寒の北太平洋ルートで航海したこと。こっちは純粋に風力での航海だから、今風にいえばとても「エコ」な移動であった。

毎日毎日、丸い水平線しかない風景。マストに登って眺めると、前後左右360度水平線。地球が球体であることがよくわかる。

そんな毎日と水平線の果てに、初めて丘(陸)が見えたときの感動は、今でも原色で記憶が甦る。

こんな便利な時代に生きていて、時々あの不自由で不便な時間に戻りたくなるのだ。