信頼と期待を取り戻す

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3月11日の水曜日。
今朝も5時には目覚ましナシで起きられた。この時間はまだ窓の外が真っ暗だ。

今朝の最初のアポイントが早いので、昨晩はクライアントとの会食を終えて、そのままおとなしく10時半にはホテルに帰ってきた。とりわけ出張中はコンディションづくりが重要なのだ。

昨日も3件、それも大きな受注をいただくことができた。

それぞれのオーナーさんにとって大きなチャレンジで投資だけど、最後には全幅の信頼を寄せて任せてくれた。ここからはデザイナーの真心と腕の見せどころだ。

別のあるクライアントには、提案した広告案を心から喜んでいただけた。
たぶん、これまでの名刺みたいな味も素っ気もない広告から、本当に「共感してくれるお客さん、頼りにしてくれるお客さん」からの反応が得られる広告になると確信している。

また別のクライアントのXさんは、創刊当時からずっとサンディエゴ版に広告を掲載してくれていたのだけど、初めてキチンとあいさつをさせていただいた。

Xさんからは、ずいぶんスタッフの対応を褒めていただけたし、広告にも満足していただいて、景気がもう少し回復したらもっと予算を割きたいとも言ってもらえた。きっとこれまで以上に信頼関係を築けたと思う。

小一時間の会話ですっかり打ち解けてきたところで、Xさんが遠慮がちにゆっくりと切り出した。

「ライトハウスさんに以前、広告を掲載していたQ社さんがどうして広告を止めたかご存知ですか?

以前、そちらの営業をしていた方が、オーナーを待っている間、忙しい社内でソファーに足を伸ばして、携帯でふんぞり返って電話してたんですって。

オーナーはライトハウスを応援していたのに失望したみたいですよ。

今はとっても感じが良いけど、それまでってライトハウスさん、人がずいぶん入れ替わってたでしょ。

(常連のお客に対して)こんな新人よく寄越したわって人が来たもの。

良いんですけどね。でもやっぱりトレーニングしてキチンとした方を外に出さないと信用問題よね」

情けないけど事実だ。

Xさんが指摘するとおりで、以前のサンディエゴ版は、スタッフが定着せず、トレーニングもフィロソフィの共有も一番肝心なことが為されないままだったから、外でそういう無礼や不義理がたくさんあった。

実際、長い時期、ロサンゼルスとサンディエゴ間の意思の疎通が十分とは言えなかったし、つい事務的な業務のやり取りに終始していた。

去っていったスタッフにしても、そんな会社に未来や夢を感じろというのが無理な話だし、そういう思いが態度に表れてもそれを攻めることはできない。

すべてボクの責任だ。

その話を聞いて、すぐに手紙(名刺のウラだけど)を書いてケーキを買って、Q社に急行した。

直接お詫びをどうしてもしたかった。ただアポイントも入れていないので、まず手紙とケーキを置いて、あとで連絡をしたい旨を受付の方に伝えて退散した。

何度か連絡を取った後、ようやくオーナーと話すことができた。

「ケーキまでいただいて、何度もご連絡をいただいてすみませんでした。ありがとうございます。いいんですよ、そのことはもう」

「いいえ、今よりももっとペラペラのライトハウスの頃から応援してくれた方をガッカリさせるなんて。

本当に申し訳なかったです。

おまけに今頃そんな大切なことを知るなんて。

経営者として情けないです。電話ではなく、直接お詫びをさせてください」

携帯電話を片手に、直立不動で心からお詫びするボクが、夕暮れのショーウィンドウに映る。

「わかりました。あまりお時間を取れませんが、始業前にお待ちしています」

会っていただけることになった!やった!

ボクの昨日一番の収穫は、信頼を裏切ったままのお客さんの存在を知ることができたことだ。知り得なかったかも知れないライトハウスへの失望や不満を教えてもらえたことだ。

もう少ししたらQ社に伺う。

目を見てお詫びをしたい。心から謝りたい。ライトハウスへの信頼と期待を取り戻すんだ。