娘の卒業に贈る言葉

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土曜日は娘の日本人学校、西大和学園補習校の卒業式だった。

そして卒業式当日の中学三年生の最後の授業を持たせてもらった。

この授業は、娘にとって、開学の時から6年間通ってきた西大和最後の授業でもある。

「卒業生のために、彼らの最後の授業で、未来に夢が持てるようなお話をしていただけませんか。将来、大人になることに希望とか勇気を持たせてあげたいのです」

昨年、娘の担任の田中先生から、青空の下のパーキングで打診を受けたとき、自分自身の未熟さ、おこがましさがアタマを過(よぎ)ったが、余計な心配は瞬間で棚に上げて、「機会をありがとうございます」と即答した。

娘やクラスメートたちに、今ボクが持ちえるエネルギーとか知恵とか大切にしているものを伝えたいと思った。そしてやがて大人になる娘の目に、一生懸命なボクを焼きつけたかった。

当日の授業では、田中先生から質問を受けるカタチで進行した。
娘は少し複雑な表情でボクを見ている。

彼らと同じ目線になれるよう、子どもの頃、授業を長く感じて時計ばかり見ていた話や、カリフォルニアの青空が好きになったそれだけの理由でアメリカに来たこと、所持金500円しかなかったことなど、自分のことをありのまま話すうちに子どもたちの表情が輝き出した。

まず伝えておきたかった、すべての仕事に通じる面白さは、「達成感」と「喜んでもらうこと、感謝してもらえること」に集約されることを、いろいろな言葉や例をあげて話した。

そして、卒業生の彼らが立派な大人になるために、素晴らしい人生を送るためにどんなことを心がけたらよいか、自分なりにまとめた、名づけて「西大和学園補習校卒業記念スペシャル、ひかるちゃんのお父さんが贈るシアワセの5つの法則(長いし、くどい)」

人を喜ばせる習慣をつける。良いところを見つけてほめる。してほしいことを先に考えて、見返りを期待しないで何かをしてあげる。心のギフトを身の回りの人に贈り続ける。両親や友だち。そうすると、まわりに人が集まる。実はまわりは鏡。良いことをしたらよい人が集まり、悪いことをしたら悪い人が集まる。良い人と悪い人がいるのではなく、同じ人間の心の中に両方の人格が存在する。自分が良くなれば、まわりの良くなる。相手を変えるのではなく自分から変わる

感謝をする。今日元気なことは当たり前ではない。自分の親や兄弟、友だちが元気で新しい日を迎えられたこと、ゴハンがおいしく食べられること、昨日より進歩していることがあったこと、身の回りのことに感謝する習慣をつけるとシアワセになる。物欲には際限がない

すべて必然。受入れる。その人が越えることのできる試練しか与えない。辛いことも苦しいこともすべて意味があること。何かを気づかせてくれようとしている。決して人のせいにしない。自分に原因はなかったか。そう考える習慣をつける

よく笑う。笑うと実はカラダにもすごく良い。キミたちは笑っている人と、機嫌の悪い人とどっちとつき合いたいか。笑うと人も集まる。運気も上がる。なにより楽しい気持ちになる

夢を持って、自分の未来を信じること。人生は思った通りになる。バカかと思うくらい楽観的に自分の未来を信じて、願いと努力を続けること。そして「いつか」ではなく、「あと何年で」「いつまでに」という目盛りをつけて、それを逆算して、今日、今月、この一年何をすべきか考え、実行することが大切。

ボクがふだん心がけていること、目指していることを、言葉を尽くしてチカラの限り伝えた。どうか彼らが、やさしい心、純粋な気持ちそのままに立派なオトナになってほしいと願いをこめて。

話し切った時、ボクに集まった子どもたちの生き生きとした表情は一生忘れないだろう。

気がついたら教室の後ろで、校長先生や先生たち、生徒の父兄もやさしい顔でいっしょになって拍手をしてくれている。

鳴り止まぬ拍手とともに退場するのは結婚式みたいで気恥ずかしかったけど、教室を出て見上げたら青空が眩しかった。

その夜、日本との会議でボクだけ遅い夕食を取っていたら娘がモジモジ寄ってきた。

「みんな、パパのことおもしろいね、大好きだって言ってたよ」

「どうだった。お話、よくわかったか」

娘は質問には答えずに、ゆっくり抱きついてキスをくれた。