アメリカンドリーマー列伝(3)

NO IMAGE

アメリカンドリーマー列伝が2回で途切れたままだった。頭でわかってたけど、書き切る気力が充実するのを待っていた。

はい、今充実してます。

残り3名、気合いを込めて書いてみたい。

3人目は渡辺龍郎さん!

“龍ちゃん”とは遡ること20年以上前に知り合った。

その当時(88年)龍ちゃんは、ガレージで会社を始めて数年の頃で、ラジコンのパーツを日本から輸入して、それを加工したりして売っていた。
まだ個人商店の時代である。

一方ボクも、アーバインのアパートの一室で始めた学習塾の生徒が80人くらいになり、学生や主婦のパートの先生を雇えるようになって、個人から個人商店に脱皮した頃だった。

ボクらは、ルームメイトのツゲちゃん(寿司シェフ)つながりで知り合った。

龍ちゃんやツゲちゃん、今のうちの嫁さんとかで集まって、それぞれ一品料理をこしらえて、リビングの教室用のパイプ机を動かして宴会をやった。アルバムの写真は楽しそうだけど、どんな話をしてたのかよく覚えていない。

もうすぐ89年になる頃、ボクはライトハウスを創刊するためにガーデナに引越し、その部屋は龍ちゃんが引き継いでくれた。

さらに時は流れて、10数年後に再会した時、龍ちゃんの会社は世界で2番目のラジコンメーカーになっていた。

アメリカとヨーロッパと日本に拠点を構え、中国に工場を持ち、15カ国の従業員を束ね、年商も100億円を超える会社の親分。だけど、龍ちゃんの気さくさはちっとも変わらないまま「謙虚にして驕らず」で、会社の器に負けない立派な経営者になっていた。うれしかったし、眩しかったし、負けてられないと思った。

そんな龍ちゃんの講演(経営体験発表)を、先週末の「盛和塾ロサンゼルス設立5周年記念合宿」で聴くことができた。そう、龍ちゃんもボクも、京セラ創業者で名誉会長の稲盛和夫さんが主宰する若手(!?)経営者のための経営道場「盛和塾」の塾生なのだ。

今回は龍ちゃんの講演の中からとくに響いたことをまとめてみたい。

はじまりまじまり〜。

(3)HPI (Hobby Product International)代表 渡辺達郎氏

・ ベクトルを重ねる
「4ヶ所の離れた場所で15ヶ国の従業員が働いている。それらの人を【哲学】(フィロソフィー)によってベクトルを合わせ、みんなの心がひとつになるよう努めている。哲学は普遍的なもので、アメリカ式も日本式もない。社歴、学歴、バックグラウンドも一切関係ない。心をひとつにして目指すのは【世界中の顧客を喜ばせること】のみ」
(解釈)お金や地位で人を釣ることはできないし、それありきの人とは長続きも大きな夢のある仕事もできない。本来、人間はもっと知的で熱い。夢やロマン、自らの人生を託しても良いと思えるくらいの意義・目的があれば、国境も言葉も肌の色も関係ない。ひとつになれる。

・ 英語はツール
「英語にコンプレックスを持っていたけど、ある時に気づいた。世の中には58種類の英語があって、ほとんどの国ではツールとして英語を使っている。そう思うと、うまく話さなくてはというコンプレックスから解放された」
(解釈)遠慮している場合じゃない。伝えよう。失敗して恥をかいたとしてもそこでまた学べる。英語は「目的」じゃなく「ツール」なんだ。恥ずかしいことは、話せないことより、話そうとしないこと、自ら壁を作ってチャンスを放棄することだ。

・ パッションと人間性
「人を採用する時に、1番重要視するのは、その人が持つ【パッション】と【人間性】。この会社で何がやりたいのか、何を実現したいのか、そこを観る。HPIが後発で成長できたのは、そういう人が集まって、常に革新的で新しいものを市場に投入してきたから。会社は人で決まる」
(解釈)知識やスキル、経験は重要だけど、それらはパッションがあってこそ活かせるし、良心や良識があってこそ、健全で夢のある製品が作れる。逆に、パッションを持って、健全で夢のある商品を世の中に送りだす組織には、パッションと立派な人間性を兼ね備えた人が集まりやすい。

・ 常に最強の人を充てる
「要となるポジションには常に1番優秀な人を充てる。社歴、年齢、職位、関係ナシ。その適性を観るために積極的に人事異動をしている。かつて新しい方針を打ち出した時、一部の社員と考えが合わず20%もの従業員が辞めたことがある。それも海外販売課のある部署がそっくり辞めてしまった。大ピンチに苦肉の策で、他部署からの人でバックアップしたのだけど、連れてきたある総務の女性がその後に大化けして柱のひとりになった」
(解釈)ひとつは、人の適性は本人も気づいていないことが多いし、意外なところで力を発揮したり、大化けすることがある。上司は、才能や個性を決めつけることをせず、様々な機会を提供しよう。部下の可能性や成長を信じよう。また、当事者が、自分の無限の可能性や未来を(自信過剰ではなく)信じる心も大切。
もうひとつ、経営者は、従業員との衝突を避けたり恐れるあまり、妥協したり問題を先延ばしにしてはならない。出血や摩擦を恐れず、やると決めたことは信念を持って断行せねばならない。時には解雇や降格人事、減俸も含めて。
それも、自らが率先して働き、自らが誰よりも自己犠牲を払い、自らが最終責任を負ってこそ、始めて部下を叱れるし、ついてきてくれる。

こんなことを、会う度にでっかくなっていく龍ちゃんの講演から学ばせてもらった。

ボクはライトハウスやLCEの仲間たちと、サンダルでも行けるような丘を目指そうとは思わない。ワインとサンドウィッチをバスケットに詰めて、フリフリのドレスでピクニックをする気は毛頭ない。もしも、うちの中堅以上でそっちが好きなメンバーがいたら転職は早いほど良いと思う。それは善悪ではなく、価値観の問題だから。それぞれが目指したい山を目指せば良いのだ。

ボクはまだ登山口でエラそうなことは言えないけど、このメンバーと本格装備で酸素マスクをつけて、人がまだ踏み込んだことがないような高くて険しい山を制覇したい。
情報と、教育やキャリアのフィールドで。

登るペースも、負荷も、求められる技量や体力も、精神力も、すべてハンパじゃないけど、共に乗り越えて、その頂上の視界をメンバーと共有したい。物心両面で仲間たちを報いたい。

そんなことを龍ちゃんの話を聴きながら改めて思った。