流浪の民

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気がつけば10月26日。
あれあれ明日は懇意の美容専門学校の理事長をご案内する日だ。

先週はハワイ出張。今週は日本から4組の来客。そして来週からは、日本、上海、ロンドンの世界一周出張が控えている。で、鏡をのぞくと髪はボサボサ。美容の専門家にこのままお会いするのもマズかろうと、急いでライトハウスで探してK’sギャラクシーに飛び込んだ。

K’sは奥さん仲間にも評判が良いし気になっていたのだけど、遠目に見る店内も広告(ライトハウスです)も洗練されててボクにはやや敷居が高かったのですね。初めての美容室に行くのに緊張するのはボクだけだろうか。今日もとにかく勢いで入った。

実はここ数年ボクはどこの美容室に行くかずっと迷っていた。

昔広告をいただいた縁で長い間切ってくれた美容師さんがいたのだけど、噂好きで終いに仲間の悪口を言い始めたので店の前を通るのも止めた。

その次に一年くらい(こっちは知人のススメで)通ったところもやっぱりおしゃべり好きで、はさみを止めて本気で話し込む。楽しい話なら良いんだけど、毎度の噂話は聞くに堪えなくて静かに離れた。そう、ボクは顔で笑って噂話と噂好きの人は極力遠ざけるようにしているのだ。

流浪の民はどこへいく。

続いてメンバーお薦めのところに行って申し分なかったのだけど、遠いところへ繁盛店でなかなか予約が入らない。

余談だけど、他都市の海外在住者に羨ましがられるひとつに、この南カリフォルニアには腕の良い日本の美容師さんが多いことがあげられる。日系社会だけでなく、腕一本で勝負できる美容の世界では数多くの美容師さんが活躍しているのだ。手先が器用なうえに繊細なのだね。

海外生活において、「日本食」「日本(語)の医者」「日本の教育」「日本(語)の弁護士」「日本の美容師」の5つは「ありがたいトップ5」にちがいない。

とりわけ贔屓の美容室にいくのは、お洒落をして外食したり、小さな旅行に行く感覚に近いと多くの女性が口にするもんなあ。

あ、美容室の悲しい話を思い出した。

それはボクが高専に時。破ったグラビア写真を片手に自転車で島(ボクの母校は全寮制で島だった)の美容室に駆け込んだ。

「この通りの頭にして」

ヨーロッパの女性モデルがふんわりパンク頭でこっちを見上げている写真をオバちゃんに差し出した。丸いそのオバちゃんは目を細めて首を傾ける。

それからしばらく。

「おにいさん、こんな感じでどう?」

居眠りしたボクは鏡を見て勢いよくアゴを落とした。ドスン!これパンクじゃない。ボーズやんか。
散髪代は500円にまけてくれたけど、帰り道の街灯はにじんでいた。

あれからもうすぐ30年。その方面は流浪の民のまま終わるのかとあきらめていた。
神さまは髪ごと見捨ててしまったのねと。

が、ラッキー。いました。K’sに。腕も感じも良い美容師さん。

ヒデさんと言います。(雲丹の丸秀とは関係ナシ)

東京とロンドンで腕を磨いて、トーランスは2年目。
ハサミさばき(って言うのかな)が小気味良く、立ち振る舞いがプロフェッシュナル。それでいて温かい空気感の人で何だか大満足。「喜んでお金を払いたい」って仕事ぶり。

うれしくて、薦められてないのにシャンプーとリンスも買いました。

そうそう、今回ドーンと掲載したカラーの広告が大反響だったとオーナーのカズさんにも喜んでいただけた。思わず心でガッツポーズ。こんなご時世にもライトハウス一点張りで託してくれたカズさん、そして足を運んでくれた読者、広告担当や制作担当を想う。みんなが繋がっている。本当にありがたい。

気分良く店を出ると、向かいのラジオ局のアナウンサーの佐伯和代さんから声をかけてもらった。「コミヤマさ〜ん!」

ここにも繋がってる人がいる。シアワセってこういうことだと思う。