ロサンゼルスマラソン

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ジムで週刊文春を読みながらバイクを漕いでいたら、TVモニターではまさに車イスのレースが始まろうとしている。

そう、今日はロサンゼルスマラソン。

メンバーのハンくんや舎弟の寺尾兄弟、友人も数多く出場している地元ロサンゼルスの一大イベント。

ボクも10年くらい前にランナーとして出場した。

学生時代は100メートル10秒台、重たいアタマを取ったら9秒の壁すら破るのではないかと期待されたアスリートのボク。

長距離は苦手とはいえ、なに、市民マラソンだし、と十分な練習もせず、ぶっつけ本番でスタートを切った。


沿道の応援のすさまじい熱気の中、あらゆる人種が老若男女いっしょになってゴールを目指す連帯感に感動した。アドレナリン大放出。もっと早くマラソンやったら良かった。か?そんな感動も興奮も、中間地点の13マイルで電池といっしょに切れてしまった。

そこまで2時間で走ってきたのに、膝が痛くなって足を止めたらもうおしまい。
屈伸をしてもマッサージしても痛みが治まらない。

棄権しようかと思ったけど、取材を兼ねていたからそう言うわけにもいかず、走っては歩き、また走っては歩き、そのうちに足を引きずりながら、時々手で膝を押しながら這うように歩いた。追い討ちをかけるように、ワキとマタが擦れる痛みがシャープになっていく。ワセリンももう効かない。

意識が遠くなるような痛みの中でもキッチリ腹が減って、そんな状況においても嫌いなものは食べたくないから、オレンジ色のロゴが眩しい吉野家に倒れ込むように入った。

ゼッケンをつけた険しい表情の青年に店員は目を剥いたが、オーダーした通り「キッズミール」が出てきた。

なぜキッズミール?腹いっぱい食ってる場合じゃないからね。
わかっちゃいるけど、やっぱり少なくておかわりしそうになった。やめたけど。

トレイにのったオマケの人形を手にして、一瞬迷ったがもったいないので持ったままマラソンに復帰した。

まだ数マイルを残した頃に、沿道の観客とランナーを分けるロープが撤収されはじめた。やばい、タイムアウトになる。

ぎこちない歩みだけど、必死でゴールを目指した。

そんなボクに「あきらめるな、きっとできる(you can do it!!)」警察官がビニール袋から輪切りのオレンジを差し出してくれた。全身の細胞に染み込む感じがした。

ゴールの電光掲示板はもうすぐ7時間になろうとしていた。そんなランナーを割れるような歓声が迎えてくれた。思わず鼻の奥がツンと熱くなった。

そんな懐かしい時間が甦った。あの連帯感と達成感を味わいたくてチャレンジを続けるランナーも多いだろう。

残念なことにボクはそのマラソンで膝を傷めてしまってもう長い距離は走れなくなったけど、時々思いついては自転車の部で参加している。