ハワイの弟(妹)分たち

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 昨日、日曜日のお昼にホノルルに到着した。

空港には陽に焼けた弟の雄三とインターン生の寺尾くんが笑顔で迎えに来てくれた。

年末年始ハワイで過ごした副社長の片山の話でも、ハワイチームは、職人気質の弟の性格が色濃く反映されて、ずいぶん指導も要求のレベルも高い中、みんながひとつにまとまって本当に良く頑張ってくれているようだ。それは数字にも表れている。

弟の運転でさっそく初めて見る“ライトハウス寮”に向かった。

ワイキキから車で10分、丘の中腹にある3ベッドの古いタウンハウスには、雄三とデザイナーの山内くん、そして寺尾くんの男3人が寝食を共にしている。想像しただけでもむさ苦しい感じだ。

ガレージには、補充用のライトハウスハワイ版が積み上がり、その隣には洗濯機。家の中も外も生活と会社のモノがごっちゃになって、もう公私がどろどろに解け合っている。

日曜日なので世の中は休日だけど、うちのメンバーは取材や配送に走り回ってくれている。これは昨年の創刊以来、大晦日も正月もなくずっと7daysの奮闘ぶり。みんな状況を理解している。今こそが踏ん張りどころなのだ。

さっそく弟と寺尾くんがキッチンに立って夕食をこしらえる間、ボクはノートブックを開いて一仕事する。

家は古くて安普請(やすぶしん)だけど、窓から自然に吹き込んでくる海風が心地良い。

いつかハワイ版が大成功したら、この家もこの時間も、すべての努力が創業メンバーの中で黄金の伝説になる。今は未来を信じるしかないし、諦めない限り失敗はない。

包丁とフライパンの音の中で未来を思い唇を結ぶ。

そのうちに仕事を終えた山内くん、あずさちゃん、そして初めて会う編集の岩瀬くんが集まった。みんな可愛いライトハウスのメンバーたちだ。

手入れの悪い髭を蓄えた山内くんが人懐っこくて困ったようなクシャクシャの顔で笑った。ハワイ版の広告制作は、未だハワイの東西南北も不明でショッピングすらしたことのない彼のセンスと根性によって支えられている。

あずさちゃんは、雄三に叱られて泣かされてばかりいるようだけど、最初に会った頃より表情に少し自信が出てきた。根性があって性格がまっすぐだから、コイツは今のうちに徹底的に鍛えるねんと雄三が言っていたのを思い出した。しっかり吸収してどこまでも伸びてほしいメンバーのひとりだ。

ゴルフのソニーオープンの取材から帰ってきた岩瀬くんは、話に聞いてた通り、しっかり者でバランスが良い男だった。彼は彼で、ボクを“生(ナマ)”で見るのが初めてだからヘンな感心の仕方をしている。動物園のクマではないのだけどね。

日本の大きな出版社に長かったので、うちのような野武士軍団の中でうまく馴染めるか少し心配していたけど、笑いも取れるしみんなにも愛されているようで安心した。

目の前にハワイのライトハウスファミリーが揃った。

このテーブルも笑いが絶えない。

ヘトヘトでヨレヨレでもおかしくないのに、

 

こんなメディアを作ろう、

こんなコラムできねぇのか、

こんなこともきっとできる、

取材やクリエイティブで決して妥協するな、

読者やお客さん(広告主)の信頼を超えて尊敬されるようになるんだ!

 

結局最初から最後までずっと誌面作りの話だった。

ボクにとって、メンバーとこうして夢や誌面づくりの話をしているのが一番シアワセで充実した時間だ。

人生や世の中に、近道も金脈も油田も隣の青い芝生もうまい話もない。

あったとしても、ボクはそのカードは絶対に選ばない。せっかく生まれてこれたのだから。

額に汗し、手にマメを作って得たものだけが確かな収穫で、その愚直な努力を後輩たちが手本にする限りは決しておかしなことにならない。

例え、要領よく商売なり株でその人の代を勝ち抜けたとしても、「運任せ」はしょせん「運」だから、どこかの代でつまずいてしまうだろう。

今は足元を掘り続けるのだ。一心不乱に。すべての答えは自分たちの中にある。

そんなことを考えながら、シャンパンや焼酎がごっちゃですっかり良い顔色になった弟(妹)分たちに、いつか絶対に報いなくてはと、とろけるような気分の中でグラスを持つ手に力を込めた。