パパのことは棚に上げて

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 土曜日の朝、娘のスケートの練習からの帰り道。

「パパ、来週いよいよ運転免許の実地テストの日だよ。通るかなあ」

不安そうな娘。

「通ったら良いけど、合格しなかったらまだ免許を持って運転するには早いってことだから、もっとしっかり練習してからもう一回受けたら良いんだ」

「え〜、イヤだよ。受かりたいもん」

「ダメダメ(笑)、実地テストに受かることはゴールじゃないんだ。そのテストを楽々クリアするくらいじゃないとまだまだ危ないってこと。

実地テストの目的は、安全にマナーを守って運転できる技術をつけることで、テストに合格することじゃないんだよ。

よくみんな目的と手段、あるいは目的と要件がごっちゃになってるんだ。

例えば、SATで良い点数を取ることも、良い大学に入ることも、良い会社の入ることも、「手段」であって、「目的」でも「ゴール」でもないんだ。

人生そのものの「目的」は、自分自身が幸せな人生を送ること。

それはどういうことかっていうと、「お金儲け」とか「社会的な地位」とかじゃなく、人生や仕事を通してまわりの人に「価値」を提供して、それによってみんなに感謝されたり喜ばれる生き方、言い換えると、お客さんや仲間や家族に愛してもらえる生き方をするってことなんだ。

お金や地位はそのご褒美としてついてくるもので、決して「目的」ではないんだ。

お金はうんざりするくらいあるけど誰も信じられない孤独な人や、一生かけても使い切れないような財産を兄弟で争うような人もいるけど、それって悲しい人生なんだよ。

それはいいとして「目的」の話をすると、

テストで良い点数を取るのは、それだけ努力をして若い今の時期に知識と力をつけるため。

良い学校に入るのは、(1)良い学校ほど、それだけ努力してきた仲間や才能を持った仲間が集まっているから。そこで得た仲間は一生お互いを磨き合い高め合うことのできる財産になるから。(2)もうひとつは、それだけ高い教育を受けることができるから。良い学校には優秀な学生が集まるように、優秀な先生とお金、環境も集まる。そういう環境のなかで学ぶために今頑張るんだ。テストの点数のためじゃないんだよ。それは会社も同じ。(3)最後に、将来の職業や生き方の選択肢を増やすため。

それと、忘れちゃならないのは、人生のなかで勉強をするのは学生の間だけじゃないんだよ。

むしろ、大人になってからの方がうんと勉強し続けなくっちゃならない。

努力も勉強もし続けない大人、会社にぶら下がって生きてるような人はあっという間に錆びてしまう。会社を放り出された途端に生きる術がなくなってしまう。

とくにこれからの時代は、過去の延長で物事を判断するだけではダメなんだ。面白いけど難しい。

ものすごい勢いで変化するこの時代には、変化に対する柔軟性とか創造力、それと、みんなに協力してもらえる人間性とリーダーシップ、さらにお互いが力になる良質な人脈が大切なんだ。

良い仲間、尊敬できる仲間に囲まれて人生を送りたいなら、自分自身がそう思ってもらえる人にならなくてはならない。そのために今頑張って勉強をしてるんだよ。別に高い点数や有名な大学に入ることが目的ではないんだ。

それと、忙しい毎日のなかでも時々立ち止って、そもそも「目的」ってなんだっけって考えることが大切なんだ。これはずっとね」

横で娘は感心したように頷いている。車窓に早朝の風景が流れていく。

じゃあパパは学生時代どうだったのよと訊かないところが娘はエライ。

パパは気づくのが遅かったからなあ。はい、昔の自分のこと、棚に上げてます。

それはさておき。。。

そのままやさしい心で健康でいてくれたら120%というのが根っこのところの本心。