サンタとリンカーン

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「パパ、クリスマスプレゼント開けてもいい!?」

毎年のクリスマスのように、朝一番、ツリーの根元に積み上がったプレゼントの開封を子どもたちに急(せ)かされる。

娘はいつの間にか背丈が家内に追いつき、家内のクローゼットから洋服やアクセサリーをうれしそうに引っ張り出す14歳のレディになった。

生意気盛りの息子は、13歳にもなるのにボクが長期の出張から帰った夜は今でもベッドにもぐり込んでくる。

そんな二人に、「サンタクロース」としてプレゼントを贈ったのは去年のクリスマスが最後だった。最後の方の数年はうすうす気づいていたのかも知れないけど、サンタで居続けたい両親の心を知ってか無邪気に贈り物を喜んでくれた。

クリスマスの次の日に生まれたボクは、むしろギフト運が強くない。

子どもの頃はクリスマスと誕生日のプレゼントがいっしょにされて子供心に閉口した。

サンタとの相性も良くなかったようだ。

「なあ、母ちゃん。サンタクロースって見たことあるん?うち煙突ないで。どうやって入ってくるん?今日は寝たふりして、サンタクロース見てみようと思とんや」
と3歳か4歳の頃のボク。

「アホウ。おまえなんちゃ知らんのやの。サンタ見たら死んでしまうんで。毎年、子どもがようけ(たくさん)それで死ぬんや」

ひょえ〜っ。それを聞いた幼いボクは間違ってもサンタクロースを見てしまうことがないよう、イブの夜は布団にもぐり込みまぶたが食い込むくらい目をキツく閉じて眠った。

ある年のギフトは「キュリー夫人」の本だった。

サンタはどうしろと言うんだ。クリスマスと誕生日がマージされてオマケに偉人の本。それも化学者。もう一度寝直そうかと思った。

確かその次の年は「リンカーン」。

どうしろというのだエブラハム。暗い気持ちで、挿絵だけ追いかけてパラパラめくったら、最後の方で演説小屋の舞台の袖から暗殺者が握った銃の絵が出てきていっそう気分を滅入らせた。

なんてサンタの悪口を書いていたら、日本のお袋から電話がかかってきた。

「誕生日、おめでとう。私が生まれた大連にヒロシ(母の弟)が連れてってくれたん。楽しかったあ」

受話器から機嫌の良いときの母の声。

おめでとうはそこそこに叔父と中国に旅行に行ってきた話をボクに聞かせた。

「そら楽しかったなあ。ところで来年、会社引っ越すんで遊びにきてよ。チケット送るし」

「うん、頼むわ。3月までは忙しいからその後ならエエ。アンタもトシやから身体無理したらいかんで」

「カアサンもな。旦那さん(再婚相手)によろしいにな」

受話器を置いた時、本の翌年くらいにオセロゲームをもらったのを思い出した。