海風を吸い込みながら

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良い一日だった。

朝自転車で、急な下り坂を走っている途中の出来事。

自転車がパンクして立ち往生していたオジさんを、仲間の石上さんが即座に止まって修理してあげた。

僕なんか気にも留めずに通り過ぎた後だ。

彼は自分の予備のボンベを2本使って、ただ笑顔で、手を油で真っ黒にして直してあげた。

修理をし終える頃、フランス顏のオジさんはうっすら目のフチを赤くして喜んだ。

まだビギナーのようで、パンクの修理はまったくお手上げだったのだ。

僕は、若い友人を誇らしく思った。

「いいね」

そして、「アメリカの日系社会で、一番感謝を集める会計事務所になりたい」という彼の夢は、言葉ほど簡単じゃないけど、ひょっとした叶うかもしれないなと、吹き上げる海風を鼻から大きく吸い込みながら思った。