T弁護士(その1)
- 2006.12.29
- 日記

今年最後の出張、72時間の強行軍で日本に行ったのは、つい先々週のことだった。
出張2日目の夜は、ライトハウスCEの財務担当の役員で、昔からライトハウスの顧問をお願いしている奥村先生が馴染みにしている西麻布の「M」にお供した。
星条旗通りにひっそりと佇むその店は、千恵子さんという、それは上品で美しいママがひとりで切り盛りしていて、たまに奥村先生に連れて行ってもらっては、ちょっと背伸びをして、気持ちよく大人の酒を飲ませてもらっている。
その夜は先生が大阪に日帰りで、最終便に乗るために午後8時40分に店を後にした。「込山さん、ゆっくりして行ってな」ママの傘の中、先生は雨の西麻布からタクシーに滑り込んだ。
言葉通り素直に受け取る私は、先生のご馳走で、千恵子さんとのおしゃべりを楽しんだ。ご好意に甘えることも先輩に対する礼儀だ。
そうしていると、書類を抱えた70歳過ぎの紳士が、入ってくるなり資料を広げて、ほどなくテープに何やら用事を吹き込みながら仕事を始めた。注がれたビールに口をつけながら、こっちをチラッと見たところで目が合った。眼鏡のそこはなんだか優しい。
ママが気を利かせて、ボクのことをさっそく紹介してくれた。
(そう、ママはいつもこの店に通う各界のリーダーに対して、実力100倍くらいにボクのことを紹介してくれる)
聞いているこっちが恥ずかしくなるくらい、ボクのことを良く言ってくれた。もう、世界を動かしてるくらいの勢い。ありがとうございます!!それでもT先生というその70歳を越えるであろうオジさんは、あまり表情を変えずに、大根の煮物を箸で突つきながら適当にうなずくだけだった。
ほんの2、30分でオジさんは店を後にした。
後からママが「あの方は、日本でも5本の指に入る弁護士さんよ。きっと込山さんの力になるわ」と話してくれた。
千恵子ママの気持ちはもったいないくらいうれしいけど、だからと言ってピンとはこなかった。ただその気持ちだけで十分だった。
(ドラマのようにつづく)