残暑の京都から

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9月18日。日本は日中まだ30℃を超える残暑が続いている。

事務所がある四条烏丸のホテルからぶらぶらと朝の散歩にでる。

大通りから一本入った小径では、多くの家やビルの前で打ち水をしていて、その上を歩くといくぶん涼しいような気がした。ふと、子どもの頃の、近所の人たちと近かった夏の風景を思い出した。

交差点ではボランティアのおじさんが黄色い旗で小学生が道を渡るのを笑顔で助けている。30数年前の高松の交差点で、今もよく覚えている日焼けした小さなおじさんに、毎朝大声で「おはようございます」と言っていたけど、「ありがとうございます」が言えなかったような気がした。

帰国まであと3泊。
慌ただしくも収穫の多かったこの一週間を振り返りたい。

9月12日。

LCE役員の竹内の同行で、飲食系の人材業と、自らも飲食チェーンを手がけるL社のK社長と面会。早ければ年内に、同社が日本の飲食業の経営者を集めて米国での出店のための視察話が進む。

人種を問わず、事業を通して個人や企業が世界中で活躍できる世の中を創ること、そしてこの日系社会がもっともっと活性化拡大するために、日本からの進出や投資、起業や雇用を生むことはボクのミッションだ。

2つ目のアポイントも竹内の同行で、経済産業省の肝煎りで数年前に生まれたベンチャー支援サイト「ドリームゲート」www.dreamgate.gr.jpの松谷社長を訪ねる。同サイトは40万人の会員起業家とその卵のための情報支援を通して毎年1万件以上の会社設立を助けている。

竹内のパイプの強さで、ライトハウスやLCEが、アメリカでの起業ノウハウや進出のための情報支援、国内外での研修、進出のコンサルティングをサポートする方向で話が進んだ。この話が具体化すると、今後のアメリカへの進出や起業のハードルをうんと低くすることができるだろう。でっかいプロジェクトになりそうだ。

お昼の会食は、青山のシティクラブで、若手経営者のOさんと。

ここは会員制のクラブで、プライバシーが保てるのと上質のサービスが受けられるので都内での大切なミーティングによく使う。

Oさんは、ボクの教育事業の助けになるように、日本で最大手の学習塾の企画室の方を連れて来てくれた。同社のクライアントでもある私立の高校や中学250校に、LCEの教育研修を推薦してもらえるようお願いする。次回の出張時に同社社長をご紹介いただくことに。

もう一本、新宿で営業同行をして帝国ホテルにもどる。会食までの時間、シャワーを浴びてメールのチェック。出張中はどうしてもメールの返信が遅れがちになる。

この日は、日本を代表する弁護士で、日本の大学協会の顧問を務めるT先生と帝国ホテルのフレンチ「ラセゾン」で会食。

早めに行って、T先生に喜んでいただけそうなコースと、それに合うシャンパンとワインを、予め店の人に相談して決めておく。もちろんワインはわれらがカリフォルニアワインで。

久しぶりにお会いするT先生は終始ご機嫌でたくさんのアドバイスをくださる。「一にコンテンツの充実。二にしっかりとしたマーケティング。三つ目は効果的なPR。あなたのところはPRが弱い。新聞やテレビ、業界紙にもっと取り上げてもらうように工夫しないと。いくつか私が推薦しよう。紹介してほしいところを言ってご覧なさい」

まわりの人は大御所の顔色に右往左往するけど、ボクは、先生の残りの人生の長さと偉大な功績を考えると、知恵や人脈をしっかりと継承して世の中に役立てるのが一番と、半ばあつかましく遠慮のないお願いをしたり甘えたりしている。このご恩は、ご健在のうちにボクが成功することと、次世代に貢献することだと思っている。

T先生と別れ際に両手で握手をした次の日、「昨日話したうちで、すぐに実現してほしいことを(高畠と)3つずつ書いて返信しなさい」と温かい言葉をいただいた。ご期待に必ず応えたい。

そうそう、「ラ セゾン」では最高のサービスと料理で完璧な接待のバックアップをしてもらった。いつかカミさんを連れて来てやりたいと思ったけど、果たしていない約束が100くらいあるので黙っておくことにする。

9月13日。

帝国ホテルに勤めるAさんと朝の会食。10数年前にアメリカ事務所の所長だったAさんは帰国後もまっすぐ出世の道を歩み、今では経営の中枢で活躍している。毎回の出張でのちょっとした近況報告や情報交換の中から学ぶところが多い。とくにブランディングはヒントが盛りだくさんだ。

それにしてもお互いに責任がどんどんと重くなっていく。毎日が勉強だ。勉強しても勉強しても追いつかない。「お互いに頑張ろう」と強い握手で別れる。

午前10時から夕方まで新宿の事務所で役員会議。途中で元東京大学の副理事でLCEの顧問を引き受けてくださっている竹原さんが合流。

経営やPR戦略について様々なアドバイスをくださる。竹原さんもまたボクがもっとも尊敬する人物のひとりだ。

夜は、お世話になっているOさんの招待で新橋の「金田中」で会食。後で聞いた話だと、一見を受けない同店は長い歴史の中で財界や政界の人たちに愛され、勘定の方も一流でひとり20万円近くもするらしい。牛丼の並が600杯分・・・。そういう計算をしてはならない。

さて、一代で業界を代表する会社を育て上げ、今では夫婦で悠々自適の隠居生活を送るOさんもまたボクを応援してくれる大先輩で、時々お会いしては経営から遊び方までたくさんのことを教えてくれる。遊びも下品なそれではなく、なにをやっても粋でスマートなんだな。

たくさんの企業の売買も手掛けてきたOさんは、甘っちょろいボクに、ビジネスについての考え方や、時には駆け引きのコツをアドバイスしてくれる。そして様々な業界のキーマンを紹介してくれる。本当にボクは人様に恵まれ過ぎている。

芸者さんにお酌をしてもらいながら、ボクはむしろOさんのスマートな会話のやり取りに目を凝らして、そういう席でのホストの振る舞いを学ばせてもらう。

長唄小唄からオペラ、旅や歴史の話まで実に幅広い話題を楽しくわかりやすく、そしてその場のみんなが楽しめるように気配りしてくれるのだ。その縦横無尽に広がる話題にしっかりとついてくる芸者さんたちの教養と機転にも舌を巻いた。

Oさんにはまた世界を広げてもらった。