ロサンゼルスからの挑戦

ロサンゼルスからの挑戦
ライトハウスが主催する「日本の大学進学フェア」が先週“無事に”終わった。
“無事に”と書いたのはこのイベント、ロサンゼルスのオフィスと日本全国のキャンパス、そして全世界の視聴者をオンラインで同時に繋ぐライブイベントなので、何回やっても最後の最後まで緊張の連続なのだ。
今回の参加大学は、日本のグルーバル化を牽引する14大学(通年では20数大学)
英語と日本語で参加大学が海外生向けのプレゼンテーションをするのだけど、英語を母国語としない国からの高校生の登録も年々増えている。
登録者の出身国を見ると、アメリカ・カナダを中心に、近年はイギリス、ドイツ、フランス、スイス、ラトビア、ベルギー、ジョージア、ギリシャ、ルーマニアなど、ヨーロッパからの参加が増えている。
欧米以外も、インド、スリランカ、ロシア、モロッコ、タイ、中国、台湾、ブラジル、シンガポール、メキシコ、ニュージーランド、インドネシア、コスタリカ、そして日本と国際色豊か。
時差があるにも関わらず、南極大陸以外のすべての大陸からフェアに参加してくれている(このフェアの広報に毎回協力してくれる世界中の教育機関、メディア、団体、個人の方々に心からお礼を申し上げます。ありがとうございます)
もともとライトハウスでは在米日本人向けにアメリカの教育制度や、アメリカの大学進学情報を誌面で案内していたのが、アメリカの学費の凄まじい高騰もあって、10年くらい前から「日本の大学進学の情報を知りたい」という声がアンケートやモニターから上がってくるようになった(今も両方の選択肢を知ってもらうために、毎年アメリカの大学進学セミナーも開催している)
時を同じくして、日本国内の大学でも英語入試や英語コースが増えていった。
2017年6月、手探りの中マリオットホテル(トーランス)で最初の大学フェアを開催した。参加大学は5大学(ICU、一橋、立命館、関西、APU)、会場を埋めたのは日系の永住者や駐在員の家庭だった。当時のプレゼンテーションは日本語のみ。
それから開催地をサンディエゴ、シアトル、ポートランド、ハワイ、シリコンバレー、ヒューストン、シカゴ、ニューヨーク、ニュージャージーと全米に広げていった。
今年引退されたICUのI先生には、集客や運営が期待値に満たないと大目玉を食らった。大善は非情に似たり。そのおかげでずいぶん鍛えられた。僕らの挑戦をもっとも応援してくれた方のひとりだ。
回を重ねるごとに、日系人や帰国生中心だったフェアは日系以外の参加者が増え、プレゼンテーションは日英両語になり、ノンジャパニーズの数が伸びている。これはアメリカの高校の教師会や先生の応援によるところが大きい。
コロナで対面の開催ができなくなってからは主戦場をオンラインに移した。
移動の制約が無くなったおかげで、全米のほとんどの州と全世界から高校生やその保護者が参加できるようになった。テクノロジーの進化にも助けられた。
このフェアを始めた頃は行ったことも見たこともないアラバマやルイジアナ、はたまた英語圏以外のモロッコやコスタリカの若者が参加している今日を想像することができなかった。
毎回反省と試行錯誤とバックスピンの連続だけど、この小さな一歩を積み重ねたら、視界が開きまた新たな頂上が見えてくる。四六時中考え、改良改善を繰り返したらおかしなほうにはきっと行かない。
世界の大学はどうだろう。
僕の知る限り、欧米のトップ大学はブランド力とアルムナイの強力なネットワークを駆使して、世界中の優秀な高校生のリクルーティングを加速させている。
経営的には寄付とその運用益以外、これまではキャンパスのキャパシティ(授業料x定員)が収益の限界だったけど、コロナで飛躍的にオンライン教育の質が向上したことで、世界中の学生にオンラインでサービス提供(=学位が出せる)できるようになった。これはブランド力を武器に無限のキャンパスを手に入れたことになる。手強い。
またリアルでもアジア(日本)キャンパスや中東キャンパスなど、単独進出もしくは現地の大学と組んで世界展開をする大学も見られる。例えば2010年にアブダビで設立されたニューヨーク大学アブダビ校は、世界中から優秀な学生と学者を集めて成功している。
英語圏以外の途上国の大学も負けていない。
英語入試・英語コースを作って、欧米の大学より手頃な学費と生活費を武器に世界の高校生獲得に食い込もうとしている。
先日、マレーシアの大学の元リクルーター(モロッコ在住)にアフリカ諸国のリクルーティングの現状を教えてもらった。彼女によるとアフリカやアジアの貧しい国でも1万ドル(140万円)くらいの学費を捻出できる家庭は急増しているという。
そんな中で日本の大学のポテンシャルは計り知れない。
日本のアニメやポップカルチャーをきっかけに日本語を学んだり、日本のファンになる若者は世界で増えている。例えば毎年7月に開催されるロサンゼルスのアニメエキスポは40万人を集める。日本のアニメキャラのコスプレで爆発しそうに活気ある会場に立てば、その可能性を体感できるだろう。
余談だけど、今年はエキスポの主催者に招待いただき、エキスポの会場内でも大学フェアを開催する。どこもやったことのないコラボでどんな化学反応が起きるか今から楽しみだ。
話を戻そう。
日本に住んでいると気づきにくい日本の魅力はたくさんある。
大気汚染の心配がなく水道の水が飲めること。
安全な食材を口にできること。
衛生的な生活が送れること。
公共交通機関が正確で安価で充実していること。
物騒になったとはいえ、治安が世界トップレベルいいこと。
食べ物が美味しく、物価(生活コスト)がまだまだ安いこと。
エンターテイメントが充実していて文化的な生活を送れること。
四季があり美しい風景や建築物が残されていること。
損得より良心に従って行動する人が多いこと。
もちろん受け入れる大学が、世界の大学に負けない学びと成長の環境を提供できることが大前提だけど、世界中の保護者が知ったら自分の子どもを一度は日本に留学させたいと思うだろう。
目先のお金を稼ぐなら観光誘致は即効性があるけど、世界から尊敬される新しい日本を作るなら、じっくり時間をかけて世界中からユニークな才能を集めることだと思う。
そのためにオールジャパンで発信すること。
オールジャパンでブランディングすること。
まだまだ小さな存在だけど、ロサンゼルスからそんな挑戦をしている。