サンディエゴ

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2月28日、土曜日。
パロスバーデスの少年野球リーグの開幕セレモニーで、演奏させてもらう息子を送って、久しぶりに自分の書斎に腰をおろす。

今日でもう2月が終わる。

教育事業部は日本からのインターンシップや研修の受入のピーク、出版は通常の進行に加えて、20周年記念イベントやさまざまなプロジェクトが重なり、メンバーたちは火を噴くような忙しい毎日の中、頑張ってくれている。

朝の5時、6時くらいには片山から業務の報告や相談がメールでぽつぽつ届き始める。ほどなく西川や瀬尾、鎌塚からのメールが始まり、編集の高鳥や営業チームは8時半には会社に出揃い、始業時間の午前9時には多くのメンバーがウォーミングアップを終え、中にはトップスピードの者もいる。

夜は夜で日付が変わる頃にメールの返信が返ってきたり、廣田やハンくん、研修生のヒロシくんからの日報や業務連絡が届いたりする。

ボクが把握しているメンバーの頑張りや自己犠牲は全体の1%にも満たないだろう。こんなご時勢にも業績に恵まれているのは、彼らひとりひとりの地道な努力の積み重ねなしにはありえない。

朝晩のメールを返しながら、ボクはいつもPCやi-Phoneのこっち側でメンバーたちに手を合わせたいような気持ちになる。彼らひとりひとりが主体性と責任感と情熱を持って会社を支えてくれるから、ボクは背中を預けて走ることができる。

先週一週間はサンディエゴに出張していた。
ボクは今年一年、毎月(週日)一週間はサンディエゴに滞在して、一件でも多くのお客さんとお会いすることを決めている。サンディエゴのお客さんとの「しっかりした関係づくり&繁盛サポート」が今年の最重要テーマのひとつだ。

昨年末にサンディエゴ版創刊から6年間支局長を務めた前任者が独立して、今年サンディエゴは営業の廣田、制作の伊藤を中心に、ベテランの山田や新人、インターンが脇を固める新体制でスタートした。

前任の補強のメドも立たない年末のある日、

「Oさんが抜けてクオリティが落ちたと絶対に言われたくない。こんな時こそ、もっと誌面を良くしたい。広告も増やしてページを厚くしたい」

廣田と伊藤が強い決意を話してくれた。

その時、
前任者に任せきりだったサンディエゴ版を、
市場が限られて厳しいと言われたサンディエゴ版を、
絶対にもっともっと良くしたい、彼らと良くしてみせるという青い炎のような情熱が心の底の方からメラメラと湧き上がってきた。

そして新年。

先月今月と、朝から晩まで、これまでライトハウスに広告を掲載してくれている広告主にお会いして、徹底的に膝詰めで話をしている。

お客さんが何をしているか、何がしたいか、何を大切に考えているか、何が強くて何が他にはない(あるいは磨けば光る)特色か、それをどんな言葉や表現を駆使したらターゲットの胸に届くか。

ボクの営業は、「今、目の前のお客さんに繁盛してほしい。人生に役立ちたい。シアワセになってほしい」その想い一点(ゴール)に全神経を集中して、すべての棚卸しや議論を進める。

だから、耳障りの良い言葉やお世辞、軽妙な会話の類いはいらない。
むしろ、チャラけた関係や馴れ合いを嫌いだ。

真剣に向き合ってくれない相手、駆け引きをする相手には、ボクも心を開かないし、駆け引きで応える。自分が未熟なのはわかっているが、人生(時間)は必要としてくれる相手だけに注ぎたいのだ。

相手がお客さんであれ、こっちがお客さんであれ、その相手とおたがいの人生を費やして会う以上、できればムダを一切省いた真剣勝負で向き合いたい。

あるお客さんは、
勝負をかけた2号店で、長期リースを結んだのに、工事が遅れて、日本からのカリスマ職人のビザが取れず、その間に不況が来て、今いる職人まで昨日辞めたいと言ってきたと嘆いた。

「これからお店の賃貸契約するかどうかの相談ならボクは反対します。

だけどAさん。もうリース契約を結んだのも事実。来るはずの職人が来ないことも、今いる職人が辞めることもすべて受入れるべき事実なんです。

泣きたいくらい辛いでしょうが、誰も代わってあげられない。経営者はどこにも逃げられないんです。
この事実から目を逸らしている限り、なにも始まらないんです。

頑張りましょう。向き合いましょう。いっしょに戦いましょう!

今、お金が苦しくても、商売がキツくても、一番大事なことを思い出してください。

Aさんが元気でここに生きてるじゃないですか。
生きてて健康なら何だってできますよ。これまでだって乗り越えてきたんだから!」

この世の不幸をすべて背負い込んだようなAさんの表情がみるみる晴れて、誇らしげに自分がどのくらい丈夫か自慢話が始まった。

冊子が書けるくらいAさんの半生を伺って、別れ際に握手をした。
その時に、握手をする両の手を通して、Aさんのビジネスがうまくいくよう、ボクのエネルギーやラックが伝わるよう祈りをこめた。うまくいってほしい。乗り越えてほしい。

今回も時間の許す限り経営者と会い続けた。
時に励まし、時に知恵の限りを尽くしていっしょに打開策を考えた。

人生は「決断」の連続だ。
最善と思って手を打っても失敗や挫折を繰り返す。
反省ばかりの毎日だ。

だけど一方で、ボクら人類は「決断」によって多くの問題を乗り越えてきた。

今回の試練もまたボクたちを、この日系社会を、世の中を、チカラ強くしてくれると信じている。今求められるのは、ひとりひとりが自分の未来を信じるチカラだ。

サンディエゴを発つ前の晩、お客さんの店で廣田と伊藤とおつかれさんの乾杯をした。この二人もまた本当によく頑張ってくれている。最高のメンバーだ。

振り返ると、今週だけで、広告の新規受注と予算アップの受注を14件もいただけた。これで、今年に入ってサンディエゴ営業同行は8日間で24件の注文をいただけたことになる。大切な資金を託してくれるみなさんに、誌面の充実と広告効果で必ず応えたい。このメンバーとなら必ずできる。なんだってできる。

*「おかん」にて。手前から伊藤と廣田