母親からの小包

NO IMAGE

 5月29日の土曜日。今日から三連休だ。

日本の母親から小包が届いた。

中には酒のつまみと子どもたちへのお菓子、そして映画やテレビ番組を録画したDVD、ワープロで打った母親からの手紙と写真が入っている。

写真には、弟夫婦とうちから母の日に贈った花を持って機嫌の良さそうな母親。

DVDは母親の再婚相手のIさんが録画してはまとめて送ってくれる。

マメで面倒見がよく、温厚で物知りで行動派のIさんは、老人会でもリーダー役でいつもまわりに人が集まる。

末っ子の甘えん坊がそのまま大人になったような親父は、無精で人の面倒など見なくて、そのうえ不良で、興味の向かないことは一切やらないから、考えてみたら可笑しいくらい正反対だ。別人28号。

母親がIさんを選んだ選択基準は、親父と正反対だったにちがいない。

仕事ができる一方で、激昂すると仏壇をひっくり返すは包丁が飛び出すは火のように気性の激しい母親だったけど、5年前に再婚した頃に比べると人間が丸くなってきた。

(それでも怒りが炸裂した時には今でも四国でトップ1%くらいには入るだろうけど)

3年くらい前にアメリカに夫婦を招待してラスベガスに旅行したのを思い出した。

Iさんには日頃の感謝を込めて目一杯のもてなしを試みた。ホテルはベラッジオに泊まって、ピカソで美味しいものを食べて、良い席で「O」を観た。観劇の後はIさんを引っ張り出してカジノを満喫した。きっと喜んでくれたにちがいない。

それが翌朝、朝食に誘いにいくとIさんの表情が硬い。いや、硬いというより怒りに震えている。

しばらくしてようやく重い口を聞くと、昨晩なかなか帰ってこない(それでも1時間あまり)Iさんに業を煮やした母親が朝まで部屋の鍵を開けなかったのだという。

出た身勝手!傲慢のくす玉がホテル中でパンパン弾けた。

ちっとも変わってねえ。いや、むしろ進行してるかも。

すべての努力が台無しになった。

ラスベガスからの帰りのムードも最悪だったその旅行がふいに思い出されて、くすっとひとりで笑ってしまった。

 

お袋の家の食卓に並ぶ野菜はすべてIさんが近所の畑で育てたものだ。枝豆、キュウリ、カボチャ、ナス、大葉、トマト、ニンニク、なんだってある。

お袋はIさんの育てた野菜で料理や漬け物を作り、青春を取り返すように市民大学で熱心に学び、地域の人に囲まれて無邪気に笑い、ボランティア活動で感謝してもらい、ケンカをしながら夫婦であちこち旅行に出ている。

親父がしょっちゅう転職と失業を繰り返す家庭で、母親のストレスは相当なものだったろう。親父だって一生働くつもりの会社をリストラになって以来、思いばかりが空回りして辛い時代が長かったろう。

親が何とか元気で機嫌良く老後を過ごしてくれてるってすごくありがたい。絶対当たり前じゃない。

午後からはモールに出掛けて、来月の母親夫婦の結婚記念日のお祝いを買おう。(ついで?)に親父にも何か買ってやろ。

孝行したい時に生きててくれて感謝。