土曜日の朝に想う

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土曜日の朝。息子のリトルリーグの練習に来ている。

マラガコーブのグランドは青々とした芝生で満たされ、その向こうは太平洋をのぞむ。休日の海にパワーボートが白い線を引いて沖を走る。海からの風はそのままうたた寝しそうなくらいに心地が良い。

昨夜は夕方には仕事を切り上げ、副社長の片山と制作の中山くんを自宅に招いた。
いや、ただの飲み会。

家内は息子の剣道で家を空けるので、手料理でもてなそうと帰りにスーパーで鍋の材料を買って帰る。切って土鍋に放り込むだけだから「手料理」というほどでもないのだけど。

そういえば、この間、編集長の川嶋くんとLCEの大野くんが来たときも鍋だったかも。なんか、年中鍋を囲んでいる。

中山くんは主にライトハウスの記事のレイアウトを担当するデザイナー。入社して4年目でその前は東京のデザイン事務所で長い間働いていた。

彼は朝の勉強会で発表のとき、車に例えて話すのが好きだ。その内容もなかなかスパイスが効いている。

先週の勉強会の中山くんの発表は、従業員側を車のポルシェ、マネージメント側をドライバーに例えた。

「いくら高性能を持つ車でも、運転がヘタクソだったらその能力を発揮することはできないし、時に壊してしまうこともある。

だからこそ、その能力を引き出せない者(上司)は運転(マネージメント)すべきではないし、トップはそういう人選をしてはならない」

その通りだと思った。

自分たちをポルシェに例えるところが生意気にも取れるけど、プライドを持って仕事をしている表(あらわ)れだ。それで良い。

管理職たるもの、不断の努力で自分を磨き続けなければメンバーに認めてもらえない。

その指示が、ミッションやビジョンと矛盾したり、横着であったり、意味を見いだせない時、部下は表情に出さずとも決してそれを見逃さない。本人が自分を納得させているつもりでも部下は見透かしている。そして静かに心が離れていく。

ボクは18年余りの経験の中でそういう過ちを犯してきたのだと思う。笑顔の底では失望して会社を離れたメンバーもいるだろう。今もよほど意識して自分を戒め続けないとすぐにブレそうになる。過ちを繰り返してはならない。

部下は(そうそうあってはならないが)そのジャッジが結果として失敗を招いても、潔く認めるボスを受け止めるし、それが原因で信頼関係が崩れることはない。

しかしその時に、失敗を部下や外部要因にすり替えた時、部下はそれを許さない。

上司の保身に対して、部下はとても敏感だ。

自分を売った上司のことは一生忘れないし、許さないだろう。

管理者は決して責任を押しつけてはならない。そのときはバレなくても必ず人生の中でしっぺ返しが来る。

「手柄は部下に、責任は自分に」が鉄則だ。

それができない人間は部下を持ってはならない。

スキルが部下より劣っていてもいい。多少、言葉が足りなくてもいい。

管理職は何よりも、人間として「誠実」であることと、部下への「愛情」が大切だと思う。そして誰よりも「努力」すること。それだけでも困るけど、その3つがあったら信頼関係が崩れることはない。

会社に一番大切なのは「信頼の場」だ。みんながお互いの背中を預けて、ベクトルを重ねなければ大きな仕事はできない。そのためにも、上司は自分を磨き続けて、信頼に足る人物でなければならないし、部下は上司になった視点で物事を考え、仲間を信頼し、「批判の人」ではなく、自らが「創造する人」でなくてはならない。
「言うだけ番長」は要らないのだ。

再び鍋にもどる。

冷蔵庫でキンキンに冷やしておいたスペインとカリフォルニアのシャンパンは、うまいうまいとあっという間に空になった。鍋も大量に仕込んだ具材がみるみるうちに減っていくから気分が良い。

中山くんもエンジンがかかってきて、得意のモノマネを披露する。

うちの会社で、青木くんと中山くんのモノマネは腸がねじれるくらい可笑しくて巧い。ただ、みんな社内のメンバーのマネだから社内の人間しかわからないし、外では通用しない。

「青木さんがする社長のモノマネ」というのもある。

「うん、うん、うん(神妙にクビを傾げて頷く)、オッケ」とやるらしい。
まさかと思ったら、それを眺めながらやっていた。オソロシイ。

メンバー3人くらいの日常の会話をそれぞれ演じ分け、そこに落ちがつくと笑いが止まらなくなる。

「社内のナゾ」と言うも初めて聞いた。

週に4日、半日会社を手伝う父親は時々、誰に憚(はばか)ることなく、フロアいっぱいに響くくらいの大きな音で「カーーッ!」とやる。(その度にボクはドアを閉めた社長室の中で身を縮める)

「その後、お父さん(と、みんな呼んでいる)はそのままなんです。カーーッの後どうしているのかナゾです。飲むんでしょうか」

オレに聞くな、そしてナゾに包まれるなよ、親父。

来月からボクは2階(ライトハウスの本誌のメンバーのフロア)にも、デスクとちょっと寛げそうなソファーセットのスペースを確保する。これまでは、3階(LCEや経理、食堂のフロア)の社長室にこもって仕事をすることが多かったのだけど、これからは一日のうちの何時間かでもメンバーの顔の見えるところで仕事をすることにした。

インターフォンが要らないと言われるくらい声が大きいボクだから、けっこうメンバーには迷惑かもしれないけど。

ライトハウスを「笑顔」と「思いやり」、「お互いへの感謝」でいっぱいの会社にしたい。