親子の物語

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日本出張へ向かう機中から。

今回は娘といっしょ。

8月から大学に進学する本人の希望で、高校の卒業式の翌週からライトハウスでインターン生をしている。

リサーチや翻訳、営業同行、配送の手伝いをさせながら、ぼんやりとでも組織がどうやってまわっているか、仕事の意義とか目的みたいなことをを感覚的に学んでくれたらと願ってる。

みんなのフロアでやってる時には、本人なりに気を張っているようだけど、ランチをボクといっしょにとる社長室のホワイトボードいっぱいに落書きしたり、まだまだ高校生(いや小学生)が抜けない。またその落書きがなかなか消せないでいるボクはなかなか親バカが抜けない。

彼女が生まれた18年前はライトハウスの創刊から4年が経った頃。まだ軌道に乗ったとはとても言えない低空飛行で、暗闇を方角も定めず全力疾走しているような時代だった。

弟と数名の従業員、ラジオ局と相部屋で借りた小さなオフィス。営業も編集もデザインも配達も何でもやってつないでた。どうやって誌面をよくするか、どうやったら広告効果があがるか、今もそうだけど寝てる間も考えてた。

そんな時代に生まれた娘に、周囲を照らすような人になってほしい、元気づけられる人になってほしいと、本誌と関わりのある名前を付けた。だからこのメディア(会社)はどんなことがあっても途切れるわけにはイカンと背筋を伸ばした。

手のかからない子供だったと言うと、家人に「あなたは何もしなかったからね」「いつもいなかったもんね」と突っ込まれそうだけど、自立心の旺盛な子で、実際手が掛からなかった。

勉強しろなんて言ったことがない。勉強でもスケートでも、見るに見かねてそのくらいで止めとけといつも親のボクたちがブレーキをかけた。それでも本人は納得するまで絶対に止めなかった。テーブルに突っ伏したまま眠ることも多かった。

「もっとやっておけば良かったと後で絶対に思いたくないんだよ」

真顔で語る娘の顔を凝視してホンマにボクの血が流れているのか疑ったこともある。

それでも本人の気持ちをよそに、時々不器用で要領が悪いところに触れるとやっぱりいっしょなんだと安心したりする。

どこの家庭もそうなのだろうけど、親にとって上の子はすべてが初めて。生まれた時も初めてなら、小学校に上がるのも、高校生になるのも初めてだし、恋人を連れてくる日が来たならそれも初めてだ。

毎回試行錯誤の繰り返しで、親子の数だけ泣いたり笑ったりのストーリーがあるのだと思う。

はてさて。

ライトハウス最新号の特集「親子二人三脚インタビュー(難関大学入学への道)」では、そんな5組の親子の物語を紹介します。受験生を抱える親だけでなく、親を持つすべてのみなさんに読んでほしい渾身の特集記事です。(本誌が手に入らない方も間もなく【ライトハウスWeb版】でご覧いただけます。どうぞお楽しみに)

再び我が家に話を戻すと、娘は8月に家族のもとを離れて寮生活に入る。

新生活と未来に胸を躍らせる娘。

現実と未来に胸を締めつけられるボク。

「今年の冬もみんなでマンモス行こうな」

少し困った顔で曖昧に笑う娘。

ひとつの人格を尊重して、そろそろ解放してやらねばならないのだなあ。