柔らかい手のひら

NO IMAGE

帰国前の連休。萩の郊外に暮らす親父と温泉旅。

「あんた、競輪の選手かね」

脱衣所で、頭ツルピカのおじいちゃんに後ろから声を掛けられた。

「わかる?」

「やっぱりやぁ」

イタズラ心と、おじいちゃんが喜んでるからまあいいやと笑顔で返した。

「ワシは肺ガンなんや」

明るくけろっと言う。

「じゃあ、じいちゃんは温泉治療に来とるんやの」

「そんなところや、ガハハハハ!」

「じゃあ、早く元気になってよ!」

両手でじいちゃんの手を包むと、柔らかい手のひらでギュッと握り返してくれた。