いつでもハッピーくん

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14歳の息子はたいていボールを蹴っているか、ドラムを叩いている。「オマエ宿題したのかよ」と問うと、「うん、ちょっと待って」と何か答えるのかと思ったら、ヘルメットをかぶって自転車で遊びに行ったり、冷蔵庫を開いたりする。

勉強しないで大丈夫なものかと思ったら、通信簿は体育と音楽だけAだった。

勉強をサッパリしない割にはテストの出来が悪いと一人前に悔しがる。

イヤになるくらいボクの子どもの頃そっくり。

そう言えば、もっと小さい頃、彼は「ボクは将来MIT(マサチューセッツ工科大学)に行くんだ」と胸を張ってオトナを感心させたものだけど、近頃では少し世の中がわかってきたようで、あまりそういう乱暴なことを口にしなくなった。

ある土曜日、ボクは息子のサッカーの練習後に迎えに行くことになっていた。
ピックアップの前に、ボクはグランドの近所のスパでのんびりマッサージを受けて、さあそろそろ行くかと時計を見てびっくり。

マッサージ師のおじさんがオマケのつもりかずいぶんと長めにやってくれたようで、練習が終わる時間をとっくに回っている。一瞬髪の毛が逆立った。

大急ぎで着替えて、すでに闇が落ちた道路を、パトカーに見つかったら大目玉を食らうスピードで飛ばした。なかなか変わらない赤信号には(自分を棚に上げて)「ええかげんに変わらんかい」と吠えた。息子を待たせている時間がずいぶん長く感じられた。

暗闇に小さな影。

街頭のない闇の中で、息子がひとりで立っていた。
寒空に子どもを待たせてまま、ボクはなんて親だろう。

「ごめん!!!待たせちゃったなあ。ホントに申し訳ない!!!」

「ううん、全然大丈夫だよ。どこ行ってたの」

「いやあ、パパ、マッサージに行ってたんだよ。もっと早くに迎えに来れるはずだったんだけど。悪かったなあ。申し訳ない!!」

「大丈夫だって。そんなの気にしないで。それよりせっかくマッサージでリラックスしたんだから。心配したり緊張したらカラダが固くなっちゃうじゃない。リラックスしないと」

そう言えば、こいつは勉強はお留守だけど、誰に対してもやさしい。誰かを責めたり根に持ったりしているところを見たことがない。

いつでもハッピーくん。もうちょっと勉強してくれてもいいんだけどなあ。